厳しくないピアノ
高校時代の友人から、「米村が最初に音楽に触れたのはいつか?」という質問を受けた。
その友人は母になり、将来子供とどう音楽に向き合わせるか、考えているということだった。
いまこうして、まかりなりとも音楽と関わる仕事をしている身ではあるが、音楽との出会いなんてあまり深く振り返ってこなかった。
僕はいわゆるお稽古事として音楽と触れたのが最初だったと思う。かなり記憶が曖昧なのだが、たしかエレクトーンを1年ほどやり、その後はずっとピアノを習っていた。専攻である声楽を始めたのは、高校2年の秋だった。
大学受験のため本格的に音楽を学び始めるまで、ピアノを細く長く続けてこられたのはなぜだったかと考えると、例えば両親や祖父母のサポートがあったりと、やはりよい環境に恵まれたのも理由の1つだ。そして、先生が”厳しくなかった”というのも大きい理由なんじゃないかと思っている。
地方のコンクールにエントリーしたりと、頑張る時期もあったが、全体としてはいろんなことを先生には大目にみてもらっていた。
一方で、ほかの人のエピソードを聞くと、ピアノの先生って、どうして無駄に厳しいひとが多いんだろうと思ってしまう。
音楽家を目指す0.1%の子供にとってはピアノのテクニックは大切なのかもしれないが、それ以外の子供にとっては、音楽は純粋に楽しいもの、楽しむものでなくてはならないと思う。
もちろん、ピアノを厳しく教わることで、テクニック以外にも忍耐力が身につくとか、そういった副次的な効果はあるのかもしれない。
ただ、それで音楽が嫌いになって、一生離れてしまっては全く意味がないと思うのだ。副次は副次で、主ではない。
もし、僕が厳しい先生に習っていたら、おそらくピアノはやめていただろうし、いま、こういう仕事も、人生も、歩んでいなかったと思う。
たくさんの子供に、(ただのテクニックではない)音楽の楽しみ方の素養を身につけてもらって、音楽のある人生を楽しんでもらいたいなと、昔を振り返りながら思うのだった。
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