分かれ道は交差しつつ -その2-

前回の投稿で、ヤマハ(楽器のほう)とヤマハ発動機(バイクのほう)の共同プロジェクトの話を書いたが、皆さんうっすらご存知のとおり、この両社はもとは同じ会社だった。発動機のほうのエンブレムがいまでも音叉が組み合わさったデザインなのが、その名残でもある。
もともとヤマハは輸入オルガンの修理からスタートし、ピアノづくりにも取り組んだ。実はピアノは、金属加工と木材加工の高度な技術の塊で、良い音と楽器の量産を両立させるのは至難の業なのだ(例えば、グランドピアノには200本以上の弦があって、合計20t近い力で引っ張られている)。
ヤマハは、ピアノの開発と生産によって蓄積した技術で、多方面に多角化していく。例えば、初期でいくと木材加工技術による家具製作(衆議院の議場の内装の一部はヤマハがやっている)だったり、戦時中は木製プロペラだったり。木製プロペラからエンジン開発まで手がけはじめ、それがバイクにつながっていたりもする。また、ヤマハは今でもゴルフクラブが有名。それから、ピアノだけでなく、電子楽器の製作によって、半導体の製造に乗り出したり、強化プラスチック技術が蓄積されてモーターボートにつながったりもしている(もちろん、撤退した分野もたくさんある)。
つまり、何が言いたいかというと、芸術を相手に技術開発したときの、その力の蓄積のレベルは高くなるんじゃないか、ということだ。そもそも、先端の芸術は技術の進化で開かれる、つまり、常に新しいものが要求されているということもあるし、お客さんとしての芸術家の要求に応えていく、ということの厳しさも想像に難くない。
これは、楽器というハードだけでなく、僕らが手がけようとしているソフトな芸術にも同じことが言えると思っている。芸術を鑑賞する、消費する、という行為はその動機や満足へのプロセスが複雑だと考えていて、そこでお客さんを満足させるものを継続的に提供していくことは、挑戦が必要だと思っている。つまり、そこで蓄積されるノウハウは、とても高度であるはずだ、とも考えている。
ここでのノウハウの蓄積を、いかに応用していくのかが、僕らの中長期的な戦略の要になるんじゃないか、というのが1つの仮説だ。株式会社クロスアートとして、このkanadeaというブランドを提供しているが、キャッシュフローやノウハウの蓄積など、バランスをとりながらそれをどう進化させていくのか、どう他に展開させていくのかが、大切だしワクワクする部分でもある。


t*note|米村智裕のブログ

芸術・文化の創造と流通に革新を起こすべく、 株式会社クロスアートの経営に取り組む、米村智裕のブログです。

0コメント

  • 1000 / 1000